好光性種子(こうこうせいしゅし)や、嫌光性種子(けんこうせいしゅし)は、ガーデニングや家庭菜園の経験がある方なら、一度は耳にしたことのあるフレーズではないでしょうか?
超ざっくり言うと、発芽に光が必要な種子=好光性種子、発芽に光が必要ない種子=嫌光性種子です。
そうは言われても、「まき方は?」「何が違うの?」「この植物はどっち?」など、疑問は次々に浮かんでくるはず…。
そこで、好光性種子と嫌光性種子の意味に加え、特徴・違い・種まき方法を、大学で植物のことを学んできた私が解説します。
また、記事の後半では、代表的な花・野菜の品種がどちらに属するのかを一覧でご紹介しています。自分がまく種がどちらなのか、ぜひチェックしてみてくださいね!
種の発芽要因は4つ
突然ですが、種の発芽に影響を与えるものは何か知っていますか?
種子の発芽要因は、以下の4つです。
- 水分
- 酸素
- 温度
- 光
この4つの要素が植物にとって理想的な状態になったとき、種は芽を出すことができるのです。最適条件は、植物によってそれぞれ違います。
その植物にとってベストな状態を作り出すことができれば、「種まきで芽が出ない…」という失敗はほぼなくなるということですね!
特に、水分・酸素・温度は大切で、どれか一つでも欠けると発芽しません。種が発芽する温度「発芽適温」については以下の記事でまとめています!
そして、4つめの要素である「光」が発芽に大きく影響する種子も存在します。
好光性種子(こうこうせいしゅし)とは
明発芽種子(めいはつがしゅし)・光発芽種子(ひかりはつがしゅし)ともいいます。英語ではlight germinatingです。
発芽するために光を必要とするのが、好光性種子です。
あくまでも傾向ですが、嫌光性種子と比較して、好光性種子は小さい種が多いです。
好光性種子のまき方
好光性種子をまく時は、覆土しない、もしくはごくごく薄く覆土するようにします。土を厚くかぶせてしまうと種に光が届かず、発芽に悪影響を及ぼすのです…。
「まいた種には土をかぶせるもの」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、植物によってはその限りではありません。
まく種が好光性なら、土を厚くかけすぎないように注意しましょう。
ただし、種に土をかぶせないと、鳥に食べられやすくなるリスクがあるのも事実です…。私は、ポットを網で覆うなどの対策をしています。
嫌光性種子(けんこうせいしゅし)とは
一方、嫌光性種子とは、発芽に光を必要としない種子のこと。暗発芽種子(あんはつがしゅし)という呼び方もあり、英語ではdark germinating seedです。
好光性種子とは反対で、暗所での発芽率が高くなるタイプです。
比較的、粒の大きい種がこれに当てはまります。
嫌光性種子のまき方
嫌光性種子の場合、まき床に2~3㎝の穴やすじを開け、そこに種をまき覆土します。いわゆる一般的な種まき方法ですね。
ベストな穴の深さ・覆土の厚さは、種のサイズや品種によって変わってきます。光がいらないからといって、深くまきすぎても発芽を妨げてしまう可能性があるのです!
種のパッケージに記載されているまき方を参考にしてみてください。
好光性種子と嫌光性種子の違いは何?
見た目は同じような種なのに、どうして光に対する反応が違うのでしょうか?
少し難しい話になってしまうので、ここは興味のある方のみ読んでいただければと思います。(ぶっちゃけ私もフワッとしか理解できていないので!笑)
植物は「フィトクロム」という光を受容するタンパク質を持っています。好光性種子か嫌光性種子は、このフィトクロム反応の違いによって決まります。
好光性種子の場合、赤色光によってフィトクロムが活性化され、発芽を引き起こします。
一方、嫌光性種子は、フィトクロムの活性化に光を必要としません。暗黒のなかでも水・酸素・温度が揃えば芽を出すことができます。
ただし、フィトクロムが発芽に影響しない植物もある(光の有無が発芽に影響しない)ようです。
こちらの日本植物生理学会HPに、さらに詳しい説明がのっていましたので、興味があればぜひ。
次項からは、代表的な好光性種子・嫌光性種子を、花・野菜と分けて一覧でご紹介していきます。
好光性種子の花一覧
好光性種子の花一覧を五十音順でご紹介します。
- アキレア(セイヨウノコギリソウ)
- アゲラタム(カッコウアザミ)
- アリッサム
- インパチェンス
- オダマキ
- カスミソウ
- カルセオラリア
- カンパニュラ
- キキョウ
- キンギョソウ
- グロキシニア(オオイワギリソウ)
- コリウス
- サルビア
- ジギタリス
- サイネリア(シネラリア)
- シレネ
- ストケシア(ルリギク)
- セキチク
- ダリア
- トルコキキョウ
- トレニア
- ナツシロギク(マトリカリア)
- パンジー
- ビオラ
- ヒメリンドウ
- ベゴニア
- ペチュニア
- ベロニカ
- プリムラ
- ポーチュラカ
- ホワイトレースフラワー
- マーガレット
- モルセラ(カイガラサルビア)
- ロベリア
- ワスレナグサ
嫌光性種子の花一覧
嫌光性種子の花一覧を五十音順でご紹介します。
- アザミ
- アスター
- アネモネ
- ガザニア
- コスモス
- ゴデチア(イロマツヨイグサ)
- コルジリネ
- シクラメン
- シザンシス(コチョウソウ)
- ジニア
- スイートピー
- スカビオサ
- スターチス
- ストック
- ゼラニウム
- チドリソウ
- デルフィニウム
- ニゲラ(クロタネソウ)
- ニチニチソウ
- ニューギニアインパチェンス
- ハゲイトウ
- ハゼリソウ
- ハナビシソウ(カリフォルニアポピー)
- バーベナ
- ヒナゲシ
- ヒマワリ
- フロックス
- ベニバナ
- ヘリクリサム(ムギワラギク)
- ラナンキュラス
- ルピナス
好光性種子の野菜一覧
好光性種子の花一覧を五十音順でご紹介します。
- レタス
- ゴボウ
- シュンギク
- ニンジン
- ミツバ
- セルリー
- シソ
- ブラシカ類(アブラナ属の野菜。キャベツ・ブロッコリー・ミズナ・カブ・ハクサイ・コマツナ・チンゲンサイ・ケール・ターサイなど)
嫌光性種子の野菜一覧
嫌光性種子の野菜一覧を五十音順でご紹介します。
- ダイコン
- ネギ
- タマネギ
- ニラ
- ナス
- トマト
- トウガラシ
- ウリ類
光が発芽に影響しない植物
好光性種子・嫌光性種子の違いの項でも説明しましたが、「光があっても暗黒でも、どっちでも発芽するぜ!」という植物が存在します。
代表的なものをご紹介しておきますね。
- エンドウ
- インゲンマメ
- ソラマメ
- ホウレンソウ
- フダンソウ
- トウモロコシ
まとめ
せっかく手に入れた種なのに、管理方法のせいで発芽しなかったら残念すぎますよね…。種の購入代金・土代・水道代・世話した時間、全てが無駄になってしまうのですから(ドケチ)。
好光性種子か嫌光性種子か、その植物の性質を知って、種まきの失敗をゼロにしちゃいましょう!
もちろん、光だけでなく、水・酸素・温度の管理も忘れずに。
ここまでご紹介したなかに当てはまるものがなく、好光性種子か嫌光性種子かわからない場合の種まき方法を最後にご紹介します。
無難に、うすーく覆土しておきましょう!(笑)
私が大好きな植物の種まき方法や、種まきから育てた記録、種の取り方は以下で紹介しています!